2011年6月26日日曜日

天の川特集(1)‥万葉集は「七夕」を特別扱いしていた?

万葉集で「天の川」という言葉が出てくる和歌が50首近くあります。ただし,その和歌の出現する巻が偏っています。巻8,巻9,巻10,巻15,巻18,巻20に出現しますが,多くは巻8と巻10に集中し,それ以外は1~2首だけです。
天の川」(英語:the Milky Way または the Galaxy)は,ご存知の方も多いかと思いますが,我々が住む地球が属する銀河系(平べったい形)の厚い部分(星が重なって見える部分)が地球から見て星の川のように見えるからだそうです。
そのため「天の川」は一年中見られるのですが,日本近辺では夏の夜はその重なり具合が大きくなる位置(銀河系の中心方向を見る)に地球が来て,よりハッキリと川のように見えるようです。
<子供のころの思い出>
私が小学生位の頃,京都の山科ではまだ市街化された部分が少なく,晴れた夏の夜天の川がはっきり見えました。
また,七夕近くになると,子供がいる家では,玄関先に笹の木を立て,色紙を切って作った短冊(短冊に「天の川」と書くことも)に紐をつけてその笹の先に結び,また市販のきらきら光る細長い飾りを付け,七夕飾りをする家庭が多かったように記憶しています。
<万葉集では>
万葉集の「天の川」の和歌は当然かもしれませんが,次のように天の川の対岸に別れている彦星織姫が年に一度「七夕」の夜に逢えるという伝説を題材にしているものが多いようです。

天の川楫の音聞こゆ彦星と織女と今夜逢ふらしも(10-2029)
あまのがはかぢのおときこゆ ひこほしとたなばたつめと こよひあふらしも
<<天の川に梶(艪や櫂)の音が聞こえてきます。彦星と織女は今夜逢うようです>>

彦星と織女と今夜逢ふ天の川門に波立つなゆめ(10-2040)
ひこほしとたなばたつめと こよひあふあまのかはとに なみたつなゆめ
<<彦星と織女が逢う七夕の今宵は天の川の渡し場所よ波穏やかであれ>>

織女の今夜逢ひなば常のごと明日を隔てて年は長けむ(10-2080)
たなばたのこよひあひなば つねのごとあすをへだてて としはながけむ
<<織姫は七夕の今夜彦星に逢えたなら明日からいつものように離れ離れになり,一年間という長い月日を過ごすのですね>>

これらの短歌はすべて巻10に出てくる詠み人知らずの短歌で,「秋の雑歌」の「七夕」と題した98首の長短歌の中に出てくるものです。
私の訳を見て頂ければ分かるように,これらの短歌の表現したいことは非常にシンプルです。何か「七夕」や「天の川」の逸話を解説しているようだとも私には感じられます。
あの天の川君だったらきっと「アカン。そのまんまやんけ。何のひねりもあらへん。」と,私の作った短歌に対する評価と同じように酷評するかもしれませんね。
<万葉集での七夕の扱い>
万葉集にわさわざ「七夕」と分類して98首も詠み人知らずの和歌を掲載するのは万葉集の編者の意図があるのではないかと私は想像します。

・当時,「七夕」伝説を研究することを趣味とする会(複数かも)があり,年に一度「七夕」の時期に集まり,和歌を詠む(ただし,匿名で詠む)行事を行っていた。
・その会(「七夕学会」のようなもの)に所属するメンバーは「七夕」伝説にあこがれる人々が多かった。
・会のメンバーは自分の「七夕」伝説に関する知識を和歌で競い合っていた。
・編者はその会の主催者または主要メンバーであり,「七夕」伝説を広めたかった。

ここまで想像を膨らましたついでにさらに想像を膨らまします。「七夕」伝説を広めようとしていたのは,実は山上憶良大伴家持だったのではないかと。
その心は次回でテーマとします。
天の川特集(2)に続く。

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