2009年5月24日日曜日

少し枕詞に挑戦します

いよいよ,これから何回かに分け,枕詞(まくらことば)のリバース・エンジニアリングに挑戦することにします。
枕詞は,ある言葉を引き出すために,その言葉の前に置く,慣用的な修飾語です。
今,NHK教育放送で今毎平日朝放送されている「日めくり万葉集」の冒頭のタイトルCGに出てくると有名な枕詞をあげてみます。

あかねさす…日、昼、照る、君、紫にかかる枕詞
あしひきの…山にかかる枕詞
あまさかる…鄙(ひな)にかかる枕詞
あをによし…奈良にかかる枕詞
いさなとり…海、浜、灘にかかる枕詞
たらちねの…母にかかる枕詞
ちはやぶる…神、宇治、人にかかる枕詞
ひさかたの…天、空、月、雨、都,夜にかかる枕詞

枕詞は,中には4文字,6文字のものもありますが,ほとんどは5文字です。
また,万葉集に現れる枕詞の過半数が名詞+「の」で終わります。ただし,「の」の前の名詞は何かの修飾語が付いているものがほとんどです。
たとえば,

あかぼし(赤星)の,あきはぎ(秋萩)の,あさかみ(朝髪)の,あとたづ(葦田鶴)の,あらたへ(荒栲)の,いざりひ(漁り火)の,おきつも(沖つ藻)の,かぜのと(風の音)の,こもりぬ(隠り沼)の,ささなみ(楽浪)の,さすたけ(刺す竹)の,しらなみ(白波)の,たまのを(玉の緒)の,とぶとり(飛ぶ鳥)の,なよたけ(弱竹)の,まつがね(松が根)の,ゆくかは(行く川)の

などがあります。
このタイプでは,形容詞,動詞,名詞,名詞+「の」または「つ」が後の名詞の修飾語としてついている形が一般的です。

「の」で終わらない枕詞では,5文字の(修飾語付き)名詞だけの枕詞があります。
たとえば,

ありちがた(在千潟),いそのかみ(石上),いへつとり(家つ鳥),おきつとり(沖つ鳥),からころも(韓衣),くさまくら(草枕),こまにしき(高麗錦),とほつかみ(遠つ神),はますどり(浜洲鳥),まきはしら(真木柱),まそかがみ(真澄鏡),みなのわた(蜷の腸),やさかどり(八尺鳥),ゆふたすき(木綿襷),ゆふづくよ(夕月夜),ゐまちづき(居待月)

などてす。後に「の」を付けても不自然ではないけれど丁度5文字のために「の」を外しているようにも感じます。

さらに「の」で終わらない枕詞のタイプとして,動詞があります。
たとえば,

あからひく(赤ら引く),あさひさす(朝日差す),あまさかる(天離る),あられうつ(霰打つ),いはばしる(石走る),うちなびく(打ち靡く),うづらなく(鶉鳴く),かがみなす(鏡なす),きもむかふ(肝向ふ),たかてらす(高照らす),たまかぎる(玉限る),なつそびく(夏麻引く),ふせやたき(伏屋焚き),みこもかる(水菰刈る),ももつたふ(百伝ふ),やくもさす(八雲さす)

などです。
この他,名詞+「を」(例:衣手を,衾道を など)のタイプや,形容詞のタイプ(例:玉藻よし など),動詞+感嘆詞「や」のタイプ(例:天飛ぶや,高知るや など)がありますが,数は多くありません。

万葉集で数百は出てくる言われる枕詞,まだまだ手ごわい相手です。

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