2009年5月1日金曜日

万葉集で出てくる○○川(河)

例の如くエクセルのオートフィルタ機能を使って,私が作った万葉集用語集から,今度は「川」または「河」で終わる言葉を出してみました。
3月6日に投稿した「山」で終わる言葉の説明と同じで,ほとんどが地名です。
これで出てきた(万葉集で詠まれている)川の名前で,私がどのあたりにあるのか思い浮かぶのは次のものです。

明日香川(奈良県),●安曇川(滋賀県),宇治川(京都府),片貝川(富山県),●紀の川(和歌山県),●久慈川(福島県,茨城県),佐保川(奈良県),●鈴鹿河(三重県),●多摩川(東京都,神奈川県),玉島川・松浦川(佐賀県),●千曲の川(長野県),●利根川(千葉県,茨城県,埼玉県,栃木県,群馬県),泊瀬の川(奈良県),●富士川(静岡県),吉野川(奈良県),●武庫川(兵庫県),●野洲の川(滋賀県)

この中で●を付けた川は,万葉集で1首だけ出てくる川です。その他の川も奈良県の川を除き,数首和歌で読まれているだけです。選者ができるだけ多くの川が出てくるように和歌を選んだ意図が見えるような気がします。
また,川の名前ではないですが,河がついた地名がいくつか出ています。

古河(茨城県),駿河(静岡県),三河(愛知県)

では,関東地方の川を詠った和歌をいくつか紹介してみましょう。

☆利根川を詠った東歌
利根川の川瀬も知らず直渡り波にあふのす逢へる君かも(14-3413)
とねがはのかわせもしらず ただわたりなみにあふのす あへるきみかも
<<利根川の浅瀬も知らないでが何も考えずただ渡ったら,波に合うように貴方と逢うことができましたよ>>

利根川が浅瀬を探して渡らないといけないくらい大きな川だということが分かります。

☆多摩川を詠った東歌
多摩川にさらす手作りさらさらになにぞこの子のここだ愛しき(14-3373)
たまがはにさらすてづくり さらさらになにぞこのこの ここだかなしき
<<多摩川で晒して手織りの布がさらさらと流れている。それをしている女の子の可愛いことといったらありゃしない>>

多摩川は,流れが緩やかで,地元の人の暮らしや仕事と関わっている川であることが分かります。

☆久慈川を詠った防人歌
久慈川は幸くあり待て潮船にま楫しじ貫き我は帰り来む(20-4368)
<くじがははさけくありまて しほぶねにまかぢしじぬき わはかへりこむ
<<久慈川よ無事に待っていてくれよ。防人の任が終わったら九州の塩を載せた船に楫をいっぱい取り付けて急いで帰ってくるから>>

久慈川が海とつながっていて,船による物資の輸送が盛んであることが分かります。

☆千曲川を詠った東歌
信濃なる千曲の川のさざれ石も君し踏みてば玉と拾はむ(14-3400)
しなぬなる ちぐまのかはの さざれしも きみしふみてば たまとひろはむ
<<信濃の国あるという千曲の川の小石も,貴方が踏んだ石でしたら玉と思って拾いましょう>>

千曲川は,小さな石が採れる川であることが分かります。

万葉集の地方の和歌に出会うと,万葉集が地方赴任を経験するであろう新人官僚や官僚の姉弟の教材として使われたのではかいかという仮説を私は立てたくなってしまいます。

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