2013年3月5日火曜日

当ブログ5年目突入スペシャル「羈旅シリーズ(3):遣新羅使」

<イタリア旅行報告3>
今回はナポリ発のユーロスターの車内からアップしています。
一昨日はカプリ島観光の後,マテーラの洞窟住所を見学しました。冷たい風と雨が時々降ってきて非常に寒かったのですが,実際に住んでいる洞窟住居はなかなか見ものでした。
昨日は朝から快晴で,アルベロベッロのホテルから徒歩でトゥルリ(トンガリ屋根の家)を散策しました(写真上)。
そして,ポンペイへ移動し,広い遺跡の中を丁寧に快適に歩いて見学できました。見学後地元産と思われるレモン風味のジェラートを美味しく食しました。また,アルベロベッロからポンペイまでのバス移動(約4時間)もアドリア海にそって北上する高速道路から地平線彼方に続く南イタリアの田園風景(一面のオリーブ畑,ブドウ畑)の広大さに感動の連続でした(写真下)。
高速道路のサービスエリアの売店でビールやワインを売っているのはさすがにお国柄だとも感じました。地元南イタリア産ワイン(もちろんコルク栓)3本セットがたった10ユーロ(約1,250円)で売っていました。イタリア人のツアーバスの運転手もその安さに驚いていました。酒好きの天の川君が時差ボケでバスの中で寝ていてくれて助かりました。ナポリに戻った夕食のレストランでは地元ワインをハーフボトルで頼みました。陶器でできたデキャンタで500ml以上は確実ありそうなほど並々と入れて持ってきてくれました。レストランのハウスワインなので7ユーロ(約900円)は超お得でした。ただ,半分以上は天の川に飲まれてしまいましたが。
今日も快晴で暖かく,アマルフィ海岸を快適にドライブし,アマルフィで散策しました。そのとき,日本人のカップルが結構式を挙げているところに遭遇し,びっくりしました。夕方にはナポリに戻り,ナポリ駅からユーロスターでフィレンツェに向かっています。
<羇旅シリーズ(3)>
さて,今回の羈旅シリーズは遣新羅使を扱います。遣新羅使は当然新羅の国へ行くわけですから,長い旅をするに決まっています。
万葉集で遣新羅使とその妻が詠んだの旅にまつわる和歌の数は約140首もあり,そのすべてが巻15に収められています。
その中から,まず残してきた彼女に純心を誓う1首からです。

はろはろに思ほゆるかもしかれども異しき心を我が思はなくに(15-3588)
はろはろにおもほゆるかも しかれどもけしきこころを あがもはなくに
<<何度も貴女は物思いをするかも知れませんが、旅先で浮気をする考えはまったく持っていません>>

これに対する妻の返歌はありません。こんな短歌を詠んで送ったら,相手は余計に心配するに決まっています。この短歌の作者は,優秀だが女性の気持ちを理解できていない人生経験が不足した新羅使だったのかもしれませんね。
さて,次は潮待ちの後,ようやく夜中出航となった情景を詠んだ1首です。

我れのみや夜船は漕ぐと思へれば沖辺の方に楫の音すなり(15-3624)
われのみやよふねはこぐと おもへれば おきへのかたにかぢのおとすなり
<<私たちのみが夜中に出航するのだと思っていたが,すでに沖の方で櫂の音がしているなあ>>

今回のイタリアツアーの行く先々で日本人観光客ツアーにホテル・観光地でけっこう遭遇します。
みんな同じ行動スケジュールの場合も多く,添乗員やガイド同士もよく知った間柄で,微妙に混まないように行動スケジュールを調整している様子が感じられます。そんな状況を知らないのは,初めて参加するツアー客のみという状況ですが,この短歌もそんな情景を感じさせますね。
旅では,帰ったとき,家族や知人へのお土産のことが課題のひとつです。遣新羅使の旅の歌にもそんな1首があります。

家づとに貝を拾ふと沖辺より寄せ来る波に衣手濡れぬ(15-3709)
いへづとにかひをひりふと おきへよりよせくるなみに ころもでぬれぬ
<<帰りのお土産にと貝を拾おうとしていたら,沖の方から寄せてきた波に衣と手が濡れてしまった>>

今でも旅先でお土産によさそうだと思い,自分だけの考えで急いで買うと結局高いものを買ってしまうことがよくあります。この遣新羅使は,お土産にできそうなきれいな貝がありそうだから,自分で取りに行ったら波をかぶり大切な衣を濡らしてしまったのです。この場合は,やはり採り慣れた人が採ったものをお金を出して買った方がよかったのかもしれません。旅先でのお土産は難しいですね。
次回は,万葉時代の女性が旅をして詠んだ和歌を紹介します。
当ブログ5年目突入スペシャル「羈旅シリーズ(4):女性作」

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