2013年3月1日金曜日

当ブログ5年目突入スペシャル「羈旅シリーズ(1):山部赤人」

<イタリア旅行>
私は,今イタリアのローマ郊外にあるホテルの部屋からこのブログをアップしています。
成田空港から13時間のフライトで数時間前にローマに到着しました。日本でレンタルしてきた海外で使えるWi-fiは快調に使えています。
日本時間は3月1日ですが,現地はまだ2月28日の最後の時間です。明日(3月1日)は午前はバチカン,午後はローマ市内を観光し,夜はナポリに宿泊予定です。
そういえば,2月28日でローマ法王ベネディクト16世が退任し,次期法王がコンクラーベで選出されるまでは,不在という珍しい時期に私たちは訪れることになりました。
それに加え,退任した元法王が存命であることは600年前以来とのことで,それもまたこの旅の思い出話のひとつになりそうです。
私はキリスト教徒ではありませんが,いろいろな国の歴史にも興味をもつひとりとして,案内してくださる方に種々聞いてみることを予定しており,明日を非常に楽しみにしています。
<羇旅シリーズの最初>
さて,今回の万葉集羈旅シリーズのトップバッターとして,旅の和歌をたくさん詠んでいる山部赤人(やまべのあかひと)をおいてほかにふさわしい歌人はいないと私は思いました。
赤人は百人一首にも出てきていますので,万葉歌人の中でも一番よく知られた歌人のひとりでしょう。万葉集における赤人が優れた歌人であるのは,大伴家持が「山柿の門(さんしのもん)」として,柿本人麻呂と同等に並び称したことからもわかります。
「山柿」の「山」は山部赤人,「柿」は柿本人麻呂をさしているといいます。また,古今和歌集の序で紀貫之(きのつらゆき)も赤人と人麻呂は両者とも甲乙つけがたいと書いています。
では,いくつか赤人の旅の歌を紹介していきましょう。

朝なぎに楫の音聞こゆ御食つ国野島の海人の舟にしあるらし(6-934)
あさなぎにかぢのおときこゆ みけつくにのしまのあまのふねにしあるらし
<<朝なぎに舵の音が聞こえています。きっと宮中に食糧を供給する国にある野島(淡路島)の海人の舟なのでしょう>>

私は海の近くの旅館・保養所・研修所に今まで何度も泊まっていますが,やはり夜明けのころに,波が静かな海で漁師が漁をしている舟を見ることがあります。そこで獲れた魚は早朝の市場で競りに掛けられ,その日の宿泊場所(連泊の場合)の夕食になるのかなあと想像したことがあります。
この赤人の短歌もそんな思いがあったのかもしれません。ただし,その魚は,宮中で出すためのものだろうと赤人は想像していると私は思います。西国からの厳しい旅も,難波に地がづいてほっと一息つけた感が私には伝わってきます。
次は,西国へ向かうもっと厳しい旅の情景を詠んだものです。

風吹けば波か立たむとさもらひに都太の細江に浦隠り居り(6-945)
かぜふけばなみかたたむと さもらひにつだのほそえに うらがくりをり
<<風が吹くと波が立つだろうかと様子をみるため都太の細江の浦に隠れている>>

船の旅は,当時なかなか大変でした。今日私が13時間かけてイタリアに飛行機(もちろんエコノミークラス)で飛んだときの大変さとは比べ物にならないです。
当時は,気象の変化に対して,常に気を付けて航行する必要があったのだと思います。波が高くなると,波が静かな入り江の島影に隠れて,波が静まるのを待つしかなかったのでしょう。
赤人の羈旅の歌で最後に紹介するのは,土地礼賛の1首です。

沖つ島荒礒の玉藻潮干満ちい隠りゆかば思ほえむかも(6-918)
おきつしまありそのたまも しほひみちいかくりゆかば おもほえむかも
<<沖つ島の荒磯に生える玉藻は,潮が満ちたら隠れていくので,より美しく思えるようだ>>

旅というものは,苦労もあれば,新たな発見で感慨にふけることもあります。
ただ,ヨーロッパ旅行は,今行っておかないともっと年を取ってからでは,きついことを初日でまず感じました。飛行機もホテルも。
そうだよね,天の川君?

天の川  「飛行機で出たワインを飲み過ぎてもた。もう寝るわ。ほな,たびとはんブオナノッテ~。」

なんで,天の川の口からイタリア語で「おやすみなさい」が出てくるのだ。さては,天の川のやつ,イタリア女性に声をかけようと勉強してきたかな?
当ブログ5年目突入スペシャル「羈旅シリーズ(2):高橋虫麻呂」に続く。

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