2009年6月28日日曜日

万葉集で難読漢字を紐解く(あ~)

<難読漢字シリーズ開始です>
テレビで漢字の読みや記述の問題をタレントが解く番組が結構放送されていますね。そこで出題されるような難読漢字の多くは,読みが「やまと言葉」で,意味を「漢字」で表しているものが多いようです。
昔の人は「やまと言葉」にそれと近い意味の漢字を当て,漢字の意味を知っている人には,その言葉の意味が解るという仕組みを考えたのでしょう。
漢字の代わりに英語にした例を示すと「twilight(たそがれどき)の美しい浜辺」のように,「twilight」と書いて「たそがれどき」と読ませるようなものですね。
<難読漢字が出てしまう理由?>
ところで,漢字の発音(音読み)が読みなら,読みを比較的簡単に類推できます。しかし,やまと言葉に漢字を当てた場合,漢字の発音とは全く無関係の読みになるため,日常的に漢字と読みの両方を使っていないとすぐ忘れてしまう。だから,難読になりやすいのだと私は思います。
これからの何回かのシリーズでは,やまと言葉の宝庫である万葉集に出現し,後から当てられた漢字で難読文字になっていそうなものを順次紹介します。
まず,読みが「あ」で始まる言葉です(地名は除く)。

蜻蛉(あきづ)…トンボの古名
父菜(あささ)…リンドウ科の多年草
可惜(あたら)…もったいないことに(副詞)
羹(あつもの)…熱い吸い物。(注)「羹に懲りて鱠(なます)を吹く」のことわざを知っている人は別に難読ではない?
率ふ(あどもふ)…掛け声をかけて,軍勢などを引率する(動詞)。
花鶏(あとり)…スズメ目アトリ科の鳥の名
楝(あふち)…センダン(栴檀)の古名
母(あも)…「はは」の東国方言。
東風(あゆ)…東の風。(注)北陸地方では「あい」と呼び,読み方はポピュラー?。東風(こち)は春に東から吹く春風。
殿(あらか)…宮殿

さて,大伴家持は,越中赴任中に次の和歌を詠んでいます。

東風いたく吹くらし 奈呉の海人の釣する小舟 漕ぎ隠る見ゆ (17-4017)
あゆのかぜいたくふくらし なごのあまのつりするをぶね こぎかくるみゆ
<<越の海で「あゆのかぜ」と呼んでいる東風が激しく吹いているらしい 奈児の漁師が釣りをする小舟を漕いでる姿が隠れたり見えたりしているから>>

旧暦1月29日(新暦3月上旬)にこれを詠んだ家持は,まだ寒い日も多いし,都に比べ鄙びた土地だけど,春間近で,漁師が強風で多少の危険があっても,美味しい魚を獲ってくれることを期待して詠んだのかもしれません。
そういえば,3月上旬からは富山湾でホタルイカが獲れ始めます。家持は,初もののホタルイカを酢味噌に付けで酒を飲みたかったかもと考えるのは,恐らく珍味好きな私の勝手な想像でしょうね。(「い」で始まる難読漢字に続く)

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