2010年12月19日日曜日

動きの詞(ことば)シリーズ…匂ふ(2)

今回は,「匂ふ」が3回出てくる珍しい万葉集の短歌を紹介します。
この短歌では「匂ふ」を「染まる」と訳すと現代人にも分かりやすいかもしれません。

住吉の岸野の榛に匂ふれど匂はぬ我れや匂ひて居らむ(16-3801 )
すみのえの きしののはりに にほふれど にほはぬわれや にほひてをらむ
<<住吉の岸野の榛で衣を染め上げようと心を染めようとてしても染まないわたしだけれど,あなたの考えには染まりそうです>>

この短歌,竹取の翁が9人の若い娘たちに昔の経験を話したところ,9人の娘たちが感動し,返歌した9首のなかの1首です。
万葉集に出てくる竹取の翁は,あの竹取物語に出てくるストーリの翁とは異なります。
翁の元の長歌(一部)は,2009年7月14日の当ブログの投稿を参照ください。
この短歌の最後の「匂ふ」は,影響を受ける(influence)に近い意味でしょうか。
このブログで今年の6月下旬から3回,「染む」で布が徐々に染まっていくイメージが,人がある考えに少しずつ感化されることを示していると私は書きました。
「匂ふ」も最初は僅かな香りが徐々に強く感じていき,最後にはその香りで包まれてしまうイメージが,同じく人が感化されていく姿を示しているのかも知れません。
すなわち,あなたの匂い(考え)に包まれていくことを万葉時代には「匂ふ」を使ってうまく表現している例と考えられます。
<「」は漢字ではなく,国字>
ところで,「匂」という漢字は日本で発明された字(国字)です。
「ファミリーレストラン」「チャイナドレス」「ガッツポーズ」「スキンシップ」「プッシュフォン」「フリーダイアル」など,和製英語に分明される言葉がありますが,「匂」は和製漢字(国字)なのです。
和製漢字は日本で創られた漢字なので音読みが存在しません。「匂」のほか,「峠」「辻」「笹」「栃」「畑」「畠」「躾」「凧」「枠」などが和製漢字です。
さて,私のブログに失礼なコメントばかりする天の川に少し「躾」をしますか。
おい,天の川! 「加齢臭」とは何と失礼な!もう少し,..。 あれ? 天の川のヤツ,私の怒りの匂いを感じてどこかに隠れてしまったな。
匂ふ(3:まとめ)に続く。

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