2009年12月27日日曜日

万葉集で難読漢字を紐解く(め~,も~)

引き続き,「め」「も」で始まる難読漢字を万葉集に出てくることばで拾ってみました(地名は除きます)

海藻,海布(め)…食用となる海藻の総称。わかめ、あらめの類。
愛し(めぐし)…愛おしい。可愛らしい。可哀そうだ。いたわしい。
恤む(めぐむ)…情けをかける。憐れむ。恩恵を与える。
十五日(もち)…陰暦の15日
黐(もち)…モチノキの別称。とりもち。
廻る(もとほる)…めぐる。まわる。
武士(もののふ)…武士,宮廷に仕えた文武の官人。
百種(ももくさ)…さまざま。
唐土(もろこし)…唐時代の中国。

今回は,海藻(め)が出てくる詠み人知らずの短歌を紹介します。

礒に立ち沖辺を見れば海藻刈舟海人漕ぎ出らし鴨翔る見ゆ(7-1227)
いそにたち おきへをみれば めかりふね あまこぎづらし かもかけるみゆ
<<磯に立って沖の方を見るとワカメを刈る漁師の舟が出ているらしい。カモが飛びまわっているのが見えるからだろうか>>

前後の和歌は紀の国(和歌山県)の海辺の地名を詠っているようですので,この短歌も和歌山県のどこかに磯辺から見た情景を詠んだ短歌だと私は想像します。
また,和歌山県の海岸は当時陸路での移動は難しく,この短歌は冬の季節に船で港に寄港しながら旅をしている途中で詠んだのだろうと私は思います。
この短歌を詠んだ人がある港近くの磯から沖の方を見たら,多くの海鳥が飛びまわっていたのを見て「あれは何ですか?」と同行人に尋ねたら,その人は「海藻を採っている漁師の舟が沖に出ていて,採ったものか,漁師の食べ物のおこぼれにあずかろうと飛びまわっているのでしょう」という答が返ってきたのかも知れませんね。
さて,私は学生時代,同じ寮の仲間と秋の観光シーズンも終りの10月下旬東北旅行を企画し,スケジュールに青森県下北半島佐井港から遊覧船に乗り仏が浦を見に行く行程を入れました。船が佐井港を出るとすぐカモメが何羽も近寄ってきて,船の周りを飛び回っていました。船の人がパンの切れ端を渡してくれて,差し出すとあっという間にカモメがすぐ側まで飛んできて,嘴でかすめ取って行ったのを覚えています(指も少し噛まれたました)。
<カモメはカモ目?>
この短歌で詠まれいるカモ(鴨)は,実際はカモメ(鴎)だったのではないかという思いが私にはあります。もちろん,冬の海にいるカモは種類によってはあるようですが,舟の上を飛び回るのはやはりカモメかな?思ったからです。
そこで,カモとカモメの関係をインターネットで調べ始めました。
しかし,カモはカモ目カモ科,カモメはチドリ属チドリ目カモメ科でまったく別の種族。
お互いの写真を見比べても似ているところを探すのに苦労するほど違う。特に,カモメは「カモの目」から来たのかと思い,目の部分で似てるところがないか見ましたが目や目のまわりは全く違うという印象です。
また,カモメの名前の由来もインターネット上なかなか見つからないのです。どなたか御存知の方がいらっしゃったら教えて下さればと思います。
<万葉集を見たらあちこち行きたくなる?>
とにかく万葉集には,旅の思い出を蘇させたり,また旅がしたくなる和歌がたくさんあります。今の人だけでなく昔の人も万葉集の和歌からそう感じた人は多かったのではないでしょうか。紀貫之もその一人だったかも知れません。
貫之は,万葉集を評価し,古今集の編纂や和歌に対する持論を展開し,自身の土佐日記を始め,他の作家による紫式部日記和泉式部日記のような紀行文学や日記文学,平中物語大和物語のような(私は源氏物語も含める派の)歌物語枕草子のような随筆という平安時代の優れた文学ジャンル確立に大きな影響を与えた人物だと私は考えています。
紀貫之については,またの機会に詳しく触れる予定です。
(「や」で始まる難読漢字に続く)

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