2009年9月11日金曜日

万葉集で難読漢字を紐解く(す~)

引き続き,「す」で始まる難読漢字を万葉集に出てくることばで拾ってみました(地名は除きます)

蜾蠃(すがる)…ジガバチの古称。美女の細腰にたとえられる。
双六(すぐろく)…すごろく。
助丁(すけを)…防人で正丁に対する中男または次丁の身分の称。
食薦(すごも)…食膳または机の下に敷く敷物。
啜ろふ(すすろふ)…すする。
集く(すだく)…多く集まって騒ぐ。
漁る(すなどる)…魚や貝をとる。漁をする。
皇祖(すめろき)…天皇。すめらみこと。
陶人(すゑひと)…焼物師。陶工。

今回は,食薦(すごも)を詠んだ短歌を紹介します。

食薦敷き青菜煮て来む 梁に行縢懸けて 休むこの君(16-3825)
すごもしき あをなにてこむ うつはりに むかばきかけて やすむこのきみ
<<テーブルクロスを敷いて 青菜を煮て来て進ぜよう 梁に革の腰覆いを掛け(酔いつぶれて)お休みの殿方のために>>

この短歌の作者は,長意吉麻呂(ながのおきまろ)という宴席で出席者の爆笑を誘うような即興による短歌創作を得意とする歌人です。この短歌には,作者が行縢(むかばき),青菜(あおな),食薦(すごも),家の梁(うつはり)の言葉を入れて詠むというお題に対して作ったしたという注釈が題詞についています。
この短歌で出てくる「君」は,結構偉い人で,いつもは礼節にやかましい人なのかも知れません。ただ,この宴席では正装具の行縢(むかばき)を脱いで梁にぶら下げ,相当見苦しい格好で寝ているのでしょう。
そこで青菜を丁寧に煮て,きちっと器に盛り付けて,クロスを敷いた上に置き,召し上がっていただくようにするときっと礼節正しいお姿に戻るのではないか?,いや今はとても無理か?,ちょっとやってみようかい?
こんな雰囲気だったのではないかと私は想像します。

この短歌で,宴席に参加した人たちは酔いつぶれて寝ている偉い人を見て,大いに笑ったのではないかと私は思います。
長意吉麻呂は,さしずめ万葉時代の『有効期限の過ぎた亭主・賞味期限の切れた女房』で知られている「綾小路きみまろ」のような人だったかも?と私は思いたいですね。

さてさて,天の川君に『有効期限の過ぎた”たびと”・賞味期限の切れた”投稿”』と言われないように頑張らねばね。(「せ」「そ」で始まる難読漢字に続く)

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