2009年4月18日土曜日

え~い,ままよ,どうにでもして!

お待たせしました。「まにまに」について。

百人一首(古今集)に,
このたびは幣もとりあへず手向山 もみぢの錦神のまにまに(菅原道真)
<<この度は幣を用意できませんでしたが、手向山の紅葉の錦を御心のままに幣としてください>>
という短歌があります。このように「まにまに」は,「ままに」と訳せば大体意味が通じそうです。

国語辞典を見ると,今も使われる「ままに」「ままよ」「そのまま」の「まま」は,「まにま」が後世転じて使われるようになったようです。

ところで,万葉集での「まにまに」の用例は「風のまにまに」「神のまにまに」「君がまにまに」「友のまにまに」「汝がまにまに」「成しのまにまに」「馴るるまにまに」「引きのまにまに」「欲しきまにまに」「任きのまにまに」「任けのまにまに」「向けのまにまに」「行きのまにまに」があります。
自然や神の意のままにする用例は,どちらかというと少なく,相手,主君,友,恋人など人の気持ちや考えの「ままに」という用例が多いようです。

後の古今和歌集での「まにまに」用例は,上の菅原道真の短歌「神のまにまに」をはじめ,「水のまにまに」「雪のまにまに」「花のまにまに」「風のまにまに」「山のまにまに」と人との係わりが少なくなり,自然や神が対象になっているようです。
古今集の和歌詠み達は,人間関係に疲れ,自然のままに浸ることや神に縋ることが一種のあこがれ,心の慰めになっていたのかも知れないですね。

万葉の時代は,まだまだ人を信頼・信用する気持が大きく,相手の気持ちを「まにまに」で受け入れるような大らかな和歌が詠めたのかもしれません。

たらちねの母に知らえず 我が持てる心はよしゑ 君がまにまに(11-2537)
たらちねのははにしらえず わがもてるこころはよしゑ きみがまにまに
<<お母さんは(私たちのこと)まだ知らないけど,私の気持ちはもうあなた次第なのよ>>

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