2015年11月6日金曜日

今もあるシリーズ「海女(あま)」…海水に濡れた海女の姿,男には魅力的?

現代の「海女」は,水中メガネを付けて海に潜り,ウニ,アワビ,イセエビ,サザエなどを採っている女性がイメージされるかと思います。
さらに若い海女は,2013年4月~9月に放送されたNHKの朝ドラ「あまちゃん」で有名になったように,さらに可愛さや魅力的なイメージがありますよね。
やはり,健康で明るいイメージ,人魚のような魅惑的なイメージがポジティブにみられるのでしょうか。
私は,小学校の修学旅行で,三重県伊勢志摩での海女の観光実演を見たのが,初めてでした。
しかし,万葉時代の「海女」は漁り(いさり)やそれに関連する作業をする女性を広く指しますから,必ずしも海に潜ったり,船に乗ったりするだけの女性を指していたわけではなさそうです。
当時の海女がどんなイメージだったのか,さっそく万葉集の和歌をみていくことにしましょう。今回も「海女」は,この1回のみです。
最初は,奈良時代の役人である石川君子(いしかはのきみこ)が北九州に赴任または訪問したときに詠んだ短歌です。

志賀の海女は藻刈り塩焼き暇なみ櫛笥の小櫛取りも見なくに(3-278)
しかのあまはめかりしほやき いとまなみくしげのをぐし とりもみなくに
<<志賀の海女は,海藻を刈ったり,塩を焼いたりして忙しそう。櫛笥の小さな櫛を手にとって髪をすいているところを見ることがない>>

せっせと浜で働いでいる女性姿を見て,髪の毛が乱れていても,身だしなみを気にすることなしに働いている姿を君子はどう感じたのでしょう。
膚が日焼けして黒いが,若々しく健康的な良い印象をもった。その上で髪をきれいに櫛でとくと,きっと魅力的な女性たちになると考え方のかもしれませんね。
次は角麻呂(つののまろ)という伝不詳の歌人が難波の海女を見て詠んだ短歌です。

潮干の御津の海女のくぐつ持ち玉藻刈るらむいざ行きて見む(3-293)
しほひのみつのあまの くぐつもちたまもかるらむ いざゆきてみむ
<<潮がひいた御津の海岸で,海女たちがくぐつ(草で編んだ袋)をもって,綺麗な海藻を刈っているらしいので,見に行こう>>

海藻といっても,海苔のようなものでしょうか。たくさんの海女が海岸にでで楽しそうに話をしたり,大声で笑いながら作業をしているのは,たび人も見ていて楽しいのでしょうね。
また,こういう和歌を京で披露すると,そんなに遠くない(健脚なら1日で着ける)ので,「見に行こう」と思った人はたくさん現れたのではないでしょうか。
最後は,これも九州の筑後守をしていた葛井大成(ふぢゐのおほなり)が海岸で海女の姿をみて詠んだとされる短歌です。

海女娘子玉求むらし沖つ波畏き海に舟出せり見ゆ(6-1003)
あまをとめたまもとむらし おきつなみかしこきうみに ふなでせりみゆ
<<海女の若い娘が真珠を求め,沖の荒い波が立つ海に舟を出して行くのが見える>>

この海女は,まさに現代の海女と同じ漁法でしょうか。野生の真珠貝やアワビの中に潜む真珠は,京に献上すると大変喜ばれるを知っている大成としては,漁の結果がどうだったかは気になるところでしょう。
ただ,偉い長官が見に来たので,地元の長は,沖が荒れていても,無理して舟を出したのかもしれませんね。
そういう状況なら,舟で沖に行った海女は気の毒な気が私にはします。
今もあるシリーズ「音(おと)(1)」に続く。

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