万葉集で「冬」を何らかの形で詠んだ和歌は28首ほどありますが,その内「冬から春への移り変わり」を詠んだ和歌が17首ほどもあります。
それら17首の和歌では,当然「冬」は主役ではなく,「春」が主題の歌なのです。まさに「冬は必ず春となる」なのです。
寒くて暗い季節の冬より,冬が過ぎて春になったことを喜ぶ和歌ができるのも無理はありません。
万葉の時代にスキー,スケート,スノーボード,スキージャンプなどのウインタースポーツはなかったでしょうから,冬の楽しみを和歌にすることはできなかったのでしょうね。
では,冬が終わり春になったことを万葉人はどのように感じたのでしょうか。
この17首の和歌から推測すると「梅の花が咲く」,「霞が立つ」,「鶯が鳴く」,「草木の葉が萌えだす」,「野焼をする」,「(霜ではなく)露が降りる」などでしょうか。
さて,志貴皇子の有名な短歌です。
石走る垂水の上の早蕨の萌え出づる春になりにけるかも (8-1418)
<いはばしるたるみのうへの さわらびのもえいづるはるに なりにけるかも>
<<滝の上に生えている早蕨が芽ぐむ春になったんだなあ>>
今の日本でこういった場所が少なくなっているのは残念ですね。
現在春を感じるのは「花粉症」や「黄砂飛来」ということでは,ちょっと味気ないように感じます。
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