「万葉集,実ははほぼ1万の単語(言の葉)の集まり」…仮設①
という私の仮説を紹介しました。このほかにも次のような仮説を基に万葉集を見ています。
「万葉集,編者は大伴家持以外に考えられない」…仮設②
「万葉集,編集の目的はやまと言葉の教科書として使うため」…仮設③
<仮説②>
仮説②に関し,万葉集の編者はだれか不明というのが一般的のようです。しかし,私は大伴家持(おほとものやかもち)以外にあり得ないという確信を持っています。不明の根拠は編者に関する資料がないからということらしいのですが,死後すぐにあらゆる階級や業績をはく奪された家持です。資料が残っている方がおかしいと考えるのが普通だと思いませんか。彼は死後藤原(ふぢはら)家要人の暗殺事件の首謀者として弾劾されたわけですから,徹底的に彼の作成物や記録が消し去られたのは自然です。万葉集の原本が残っていないのもその説明がつきます。
<仮説③>
最後に仮説③に関してです。万葉集はあらゆる階級の人たちの和歌を集めた世界的にも珍しい歌集と評されていますが,それは結果的にそうなっただけであり,編集の目的ではないと考えるのが仮設③の前提です。当時,中国,朝鮮,西方の文化や思想が大量に輸入され,まさしく明治の文明開化のような状態だったと考えられます。夏目漱石は多くの小説の中で明治の日本人の文明開化による混乱ぶりを風刺しています。
<音読み漢字とやまと言葉>
万葉の時代,漢文の音読み言葉はいわば,今のカタカナ書きの外来語のようなものです。従来の「やまと言葉」は表記する文字がないのと,あいまいな表現が多いため,どんどん政治や都会文化の世界では外来語(漢文用語)に置き換わっていく。ただ,今の官公庁がカタカナ語を使い過ぎ批判を浴びているように,一部の特権階級や専門有識者だけが理解できる言葉では地方も含む人心をまとめることは容易ではない。地方の方言や古い言葉も含め「やまと言葉」の用法・意味・背景となる風習・地名などを示す資料を作り,制度(徴兵,租税など)や外来の文化(仏教,儒教,道教など)を「やまと言葉」で庶民に分かりやすく説明する必要があった。また,多くの渡来人が来て,在住する中,日本語を勉強するテキストも必要だった。というのが仮設③を考える所以です。
ちなみに,現「広辞苑(第六版)」には万葉集の用例引用が数千例掲載されています。
<まとめ>
仮説②はその万葉集編纂プロジェクトのプロジェクトマネージャが大伴家持であったということを意味します。プロジェクト計画書や「古今和歌集」の序のようなまえがきは完全に廃棄され,本体(仮説③:日本語テキストとして有用)の写本のみがl利用者によって残されたと私は考えているのです。
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