2011年1月4日火曜日

私の接した歌枕(4:伊香保)

年末年始スペシャル「私の接した万葉集の歌枕」は今回の伊香保で終了です。
また,機会があればその他の歌枕も触れてみたいと思いますが,次回からは「動きの詞シリーズ」に戻します。
<伊香保訪問回数>
さて,社会人として従業員100人ほどの小さなソフトウェア企業で仕事を開始した私は,今ではあまり聞かない社員旅行なるものをその後毎年20年間ほど経験します(今は合併で会社が5千人きぼとなり社員旅行はありません)。
その社員旅行で2度,大学の万葉集研究サークルの旅行にOBとして1度,伊香保の温泉旅館に宿泊しています。
また,妻方の親戚の墓地が伊香保温泉近くにあり,お彼岸などお参りに行った帰りに,多くは公共浴場「石段の湯」に寄ります。趣味のゴルフでも伊香保温泉近くのゴルフ場には何度か行っています。
まったく万葉集の歌枕と無関係なのばかりですが,今までこれほど頻繁に行った温泉地は他にあまりありません。
それでも,歴史ある温泉地で,竹久夢二徳富蘆花夏目漱石萩原朔太郎野口雨情などが訪れたという雰囲気の良さを今でも感じます。

ところで,万葉集で伊香保を詠んだ東歌は9首で,すべてがたとえば次のような結構激しい恋の歌です。

伊香保ろの沿ひの榛原ねもころに奥をなかねそまさかしよかば(14-3410)
いかほろの そひのはりはら ねもころに おくをなかねそ まさかしよかば
<<伊香保の山沿いに生えているハンノキの群生が延々と続いているみたいなずっと先のことなど考えず,今が良ければ(2人だけで居られれば)それでいいじゃない>>

伊香保風吹く日吹かぬ日ありと言へど我が恋のみし時なかりけり(14-3422)
いかほかぜ ふくひふかぬひ ありといへど あがこひのみし ときなかりけり
<<伊香保の強い風は吹く日もあれば吹かねえ日もあるだんべ。俺の恋しい思いべえは,収まる気配ね~んだがね>>

後の方の訳は,試しに今の群馬言葉にしたつもりです。違っていたらごめんなさい。
伊香保を取り上げた他の東歌は「一緒に寝ていたい」「さあ寝よう」「周りは気にせず2人だけでいよう」「何と苦しい恋よ」などいった,東歌らしい直接的な恋の表現が多いと私は感じます。伊香保はその激しい恋の気持ちを表すための序として使われています。
伊香保の嶺は今の榛名山と思われます。冬は冷たい風が榛名山から吹き下ろし,山頂は雪が積もり,頂上近くにある榛名湖は氷結します。夏は落雷や降雹が発生し,突風が吹いたりして,周辺は結構荒々しい気候だと思います。
<関東北部の人の言葉の率直さ>
当時周辺に住む人たちは,厳しい気候や突発的な気象変化に対応することが必要で,お互い強く,はっきりものを言い会うことが普通の会話となっていたのかも知れません。
群馬に以前から住んでいる私の知人は10人以上いますが,皆さんサッパリしていて,自分の気持ちを隠さず伝えてくれ,また私の話を素直に聞いてくれる良い人ばかりです。
やはり,気候風土による土地土地の人柄の違いを相互に理解し合い,いろんな地域の友人を多く持つことは自分の考えを柔軟にしたり,幅を広げるのに大きく役に立つといえるでしょう。万葉集はそういうことも私たちに教えてくれているような気がします。
さて,今日で正月休みも終り仕事開始です。また,週1回ペースに戻りますが,読者のみなさん今年もよろしくお願いします。
動きの詞シリーズ 凌ぐ(1)に続く。

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