元旦にアップした昨日の「万葉集:新春の和歌(1)」には,さっそく多くのアクセスがありました。ありがたいことです。
さて,大伴家持は,前回紹介した以外に越中で何首か新春の短歌を詠んでいますので,紹介します。
家持着任3年半が立った天平勝宝2(750)年1月2日に,越中の諸郡司を集めた宴席で詠んだ新春の短歌からです。
あしひきの山の木末のほよ取りてかざしつらくは千年寿くとぞ(18-4136)
<あしひきのやまのこぬれの ほよとりてかざしつらくは ちとせほくとぞ>
<<山の木の梢に生えている寄生木を取って髪飾りにしたのは,お集まりの皆様の千年の長寿を願ってのことです>>
家持は頭に当時「ほよ」よばれていた寄生木(ヤドリギ)の枝を頭に挿して現れたのでしょう。参加者は奇抜な家持の姿に驚いたところで,この短歌を詠んだと私は想像します。いつもと同じ格好では,聞く方も義務的になります。こんな演出も越中の郡司達にはウケたのかも知れませんね。
次は,同年1月5日に,越中国主家持の片腕である越中掾(じょう:判官)の久米廣縄(くめのひろなは)の館で開催された宴で家持が詠んだ短歌です。
正月立つ春の初めにかくしつつ相し笑みてば時じけめやも(18-4137)
<むつきたつはるのはじめに かくしつつあひしゑみてば ときじけめやも>
<< 正月の春の初め,このように共に笑い合えば,いつも良い気持ちになれるでしょう>>
万葉時代の役人は新年会を楽しみにしていたのですね。私も会社が始まったら,すぐ新年会を提案してみることにしましょう。
次は翌年の天平勝宝3(751)年1月3日に越中国府の介(すけ:次官)の内蔵縄麻呂(くらのなはまろ)の館で開催された宴に到着した家持が詠んだ1首です。
降る雪を腰になづみて参ゐて来し験もあるか年の初めに(18-4230)
<ふるゆきをこしになづみて まゐてこししるしもあるか としのはじめに>
<<降り積もった雪に腰までうずまりながら参上した甲斐がきっとあるでしょう,年の初めに>>
家持は到着が少し遅れたのでしょう。言い訳がましい内容です。
そして,その宴会は夜通し行われたのでしょうか。鶏がしきりに鳴き始めました。そこで,家持がそろそろ失礼したいとでも言ったのでしょう。主人の縄麻呂は「大雪ですから」と引き留める短歌を詠みます。
それに対して家持は即座に了解の返歌をします。
鳴く鶏はいやしき鳴けど降る雪の千重に積めこそ我が立ちかてね(18-4234)
<なくとりはいやしきなけど ふるゆきのちへにつめこそ わがたちかてね>
<<鳴いている鶏はいっそう頻りに鳴くけれど,降り続く雪が千重(数が多く)に積もるので私たちは立ち去れないですね>>
いいですね。呑みつづける言い訳を見つけては宴を続けられることができるなんてね。
ただ,厨房で縄麻呂の奥さんや使いの人たちは「早く終わらないかな~」と首を長くしている様子が想像できますね。
今,東北の日本海側では暴風雪警報が出ているところがあるようです。その地域にお住みの方は外に出ず,家でお酒を飲んでいる方が安心かもしれませんね。ただ,正月だからと言って呑みすぎないように気を付けてください。ご家族にかなり迷惑を掛けていることも考えられますから。
年末年始スペシャル「万葉集:新春の和歌(3)」に続く。
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