2017年6月12日月曜日

序詞再発見シリーズ(18) …小さな鳥はやかましい?

万葉集で序詞に鳥が出てくる投稿の2回目です。
今回は水辺で見かけることが多い鳥を見ていきます。
最初は,定番のが序詞に出てくる短歌です。

水鳥の鴨の棲む池の下樋なみいぶせき君を今日見つるかも(11-2720)
みづとりのかものすむいけのしたびなみ いぶせききみをけふみつるかも
<<鴨の棲む池の下樋が無いほどに恋しく待ち遠しい気持ちを流し去ることができず待っていたあなた様に今日お逢いできたのです>>

下桶(したび)は樽や桶の下に付けるような桶の中に残っている水や漬け込んだ発酵液を抜く口を指します。「樋口一葉」のように日本人の姓にも桶の口は使われています。
当時,下桶があり,鴨が飛来するような池を彷彿させる大きな桶(樽に近い?)が作られて,魚醤など,さまざまな発酵調味料が作られていたことが想像できます。
この短歌の作者は恋しい人と逢えたことの喜びを詠んでいるのですが,私にとっては「桶」がどんなものかに注目してしまいます。
この短歌,鳥のコーナーでないほうがよかったかも知れませんね。
次は,千鳥が序詞に出てくる短歌です。

ま菅よし宗我の川原に鳴く千鳥間なし我が背子我が恋ふらくは(12-3087)
ますげよしそがのかはらになくちどり まなしわがせこあがこふらくは
<<宗我の川原に鳴く千鳥のように絶えずあなたのことを私は恋しています>>

万葉集では,川で見かける鳥として千鳥が多く(26首ほど)詠まれています。
その中を見ると,千鳥は強く自己主張をしているように,やかましく鳴く鳥の代表格として詠まれていると私は感じます。
千鳥と川が詠まれている場合,山奥の川もあれば,比較的人が住む場所の川の場合もあります。
とにかく,千鳥は身近でいろんなところで見かける鳥だったとのだろうと私は想像します。
最後は,菅鳥を序詞に詠んだ短歌です。

白真弓斐太の細江の菅鳥の妹に恋ふれか寐を寝かねつる(12-3092)
しらまゆみひだのほそえのすがどりの いもにこふれかいをねかねつる
<<白真弓の生える斐太の細江に住む菅鳥のように妻に恋い焦がれているせいで夜毎なかなか寝つかれない >>

菅鳥はオシドリだという説が有力のようです。細江に棲む鳥なので,水に浮く鳥であることは間違いなそうです。
この細江はどこにあるのか不明のようですが,「斐太」が「飛騨」のことであれば,「飛騨地方」では,白い真弓がたくさん獲れることで京では有名だったのかも知れません。
また,その細江には「菅鳥」という鳥がいて,夫婦仲が良いことで知られていた。
場所はどうあれ,こんな地理的背景や場所の知識からこの短歌は詠まれたと私には感じ取れます。
次回は他の動物を見ていきます。
(序詞再発見シリーズ(19)に続く)

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