2009年7月18日土曜日

万葉集で難読漢字を紐解く(え,お~)

引き続き,「え」「お」で始まる難読漢字を万葉集に出てくることばで拾ってみました(地名は除く)
なお,旧かな使いで「ゑ」「を」で始まるものは,ここには含まず,わ行まで来たら紹介します。

課役(えだち)…人民に課する労役。
靇(おかみ)…水の神。雨雪をつかさどる神。
息嘯(おきそ)…溜息。嘆息。
襲(おす)…頭からかぶって衣裳の上を覆うもの。
大臣(おほまへつきみ)…天皇の前に仕える者の長。
嫗(おみな)…老女。婆。
妖(およづれ)…他をまどわすことば

さて,今回は「妖(およづれ)」が出てくる和歌2首を紹介しましょう。

石田王(いはたのおほきみ)が亡くなったとき,壬生王(みぶのおほきみ)が詠んだ長歌の反歌です。

妖の狂言とかも 高山の巌の上に 君が臥やせる(3-421)
およづれのたはこととかも たかやまのいはほのうえに きみがこやせる
<<嘘であってほしい 高山の大きな岩の上に君がおやすみになってしまうなんて>>

また,大伴家持が越中赴任中に弟の書持の訃報を聞いたときに詠んだ長歌の一部です。

~ 嬉しみと吾が待ち問ふに 妖の狂言とかも  愛しきよし汝弟の命 何しかも時しはあらむを ~ (17-3957)
~うれしみと あがまちとふに およづれの たはこととかも はしきよし なおとのいのち なにしかも ときしはあらむを~
<<嬉しくて私が「待っていましたよ」と聞くと,嘘であってほしい。ああ,愛おしい私の弟の命が,どうしてか,時はそんなに経っていないのに ~>>

両首とも死を悼む和歌で「その死の知らせは嘘であってほしい!」という気持ちを表す言葉として「妖の狂言とかも」が使われているようです。
「妖」は意味のある名詞のようですか,「妖の」は「狂言」の枕詞と考えても良いかもしれません。

これで「あ行」の難読シリーズを終わりにします。
<我が家のネコ>
ところで,私の「自己紹介」で使っている写真は,今我が家で飼っている「あう」という名のオスネコです。
なぜ「あう」かというと鳴き声が「にゃ~」ではなく「あう」としか鳴かないからです。
9年程前,すでに我が家で飼っていたメスネコ「ランちゃん」を目当てに,ときどきベランダを行き来し,中をのぞく程度の野良猫だったのですが,ある日妻(さい)が洗濯物を干すため窓を開けていたら堂々と入ってきて,そのままずっと我が家に居候をしてしまったという厚かましい奴です。
「ランちゃん」とは結局相性が悪く,いつも別々の部屋で寝ていて,たまに2匹が廊下で出くわすと唸りあっています。
でも,お腹が減ったときや家人が1日留守にしていて帰ると「あう~,あう~」となついてき,なかなか可愛い奴なのです。
写真は「あう」です。

「あう」の年齢は不詳ですが,10歳は確実に超えているはずです。人間でいえば,老人の部類でしょうか。
やがて「あう」の寿命が尽きた時には「妖の狂言とかも」を含んだ弔いの和歌を贈ってやろうと思っています。 (「か」で始まる難読漢字に続く)

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