前回の投稿で「人」で終わる言葉から万葉時代の職業の話を書きました。
同じく「人」で終わる言葉を見ていくと,その人がどの地方の人かを示す言葉が万葉集にいくつかでてきます。
例えば,つぎのようなものです。
阿太人(あだひと:奈良県),東人(あづまびと:東海,関東甲信越など),宇治人(うぢひと:京都府),紀人(きひと:和歌山県),伎倍人(きへひと:静岡県),肥人(こまひと:熊本県),須磨人(すまひと:兵庫県),難波人(なにはひと:大阪府),奈良人(ならひと:奈良県),隼人(はやひと:鹿児島県),飛騨人(ひだひと:岐阜県)
また,「人」では終わらないが,各地の人を表す言葉として次のものが万葉集で見つかりました。
明日香壮士(あすかをとこ:奈良県),東壮士(あづまをとこ:東海,関東甲信越など),伊勢の海人(いせのあま:三重県),伊勢処女(いせをとめ:三重県),菟原壮士(うなひをとこ:兵庫県),菟原処女(うなひをとめ:兵庫県),志賀の海人(しかのあま:福岡県),信太壮士(しのだをとこ:大阪府),四極の海人(しはつのあま:大阪府),志摩の海人(しまのあま:三重県),珠洲の海人(すすのあま:富山県),茅渟壮士(ちぬをとこ:大阪府),難波壮士(なにはをとこ:大阪府),野島の海人(のしまのあま:兵庫県),泊瀬娘子(はつせをとめ:奈良県),壱岐の海人(ゆきのあま:長崎県)
このように各地に住む人々や有名な人々がたくさん出てくることで,万葉集を詠んだ人は「その地へ行ってみたい」「その地の人と会ってみたい」「その地の特産物(お土産)を得たい」などと感じた可能性はあります。
また,地方に赴任することになった官僚が現地の人たちとコミュニケーションする手段として,万葉集の(ご当地の)和歌が利用されたのかも知れませんね。
万葉集が持つ情報量(総量だけでなく密度も)の多さに,改めて編者の意図を感じます。
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