<転職先は自分に合っていた>
今月転職したばかりの新しい職場にも,かなり慣れてきました。やはり,求められるいる技術とマッチ度が高いと職場に居場所ができるのに時間をあまり必要としないことを改めて感じられ,不安感はほぼなくなりました。
16日は新職場での最初の給料が振り込まれ,翌々日には長崎県壱岐の麦焼酎「天の川 壱岐づくし 3年古酒」(写真)を成城石井で奮発して買いました。
今晩,連れの天の川君にも,たまには私が飲ませてあげようと一緒に飲むつもりです。
天の川 「もう~,たびとは~ん。早よ飲もうな~。何でそんなに焦らすねん。」
いやいや,天の川君,22日は19年ぶりの朔旦冬至(さくたんとうじ)だから,その前夜をこの焼酎で祝おうということにしたのだよ。朔旦冬至とはね,...
天の川 「そんなこと知らんでかい。19年一度,冬至に八朔(はっさく)と文旦(ぶんたん)を食べてやな,寒い冬でも風邪ひかんようにお呪いする日やんか。どや。」
間違った知識で天の川君の「どや顔」を見せられてもね。19年に一度,冬至と新月が重なる日が朔旦冬至。これから日が長くなっていく,そして同じように新しい月も最初から満ちていく。そんな意味で心が改まる冬至の日と考える人もいるようだね。
<本題>
さて,天の川君にいまさら教養を深めてもらっても仕方がないので,本題に入りましょう。今回は,「照る」の2回目で,現代の私たちにとって最も身近な「日が照る」を万葉集で見ていきます。
最初の1首は,柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)が草壁皇子の死を悼んで詠んだとされる挽歌(長歌)の反歌を紹介します。
あかねさす日は照らせれどぬばたまの夜渡る月の隠らく惜しも(2-169)
<あかねさすひはてらせれど ぬばたまのよわたるつきの かくらくをしも>
<<日の光はいつも照らすけれども,夜を渡る月が欠けてしまうようにお隠れになってしまわれたことが惜しまれる>>
人麻呂にとって,太陽の照らす力は満ち欠けすることはない(日蝕以外)。しかし,月には満ち欠けがあり,その照らす力は人の命のように果かないものである象徴だったのかもしれませんね。
次は,真夏の強烈な日の光に照らされることをイメージした詠み人知らずの短歌です。
六月の地さへ裂けて照る日にも我が袖干めや君に逢はずして(10-1995)
<みなづきのつちさへさけて てるひにもわがそでひめや きみにあはずして>
<<六月の地面が裂けてしまうほど照る日光に干しても,(涙に濡れた)私の袖が乾くことがないのです。あなたに逢わないので>>
旧暦の6月は新暦ではだいたい7月ですから,田んぼの土も干上がって,ひび割れた状態になります。そんな強烈な日光でも恋が成就しないために流す涙の多さで,涙を拭う袖を乾かせない,作者の気持ちが伝わってきます。
次は,日照りで雨乞いをしたくなるほど相手の来訪を待ち望む気持ちを詠んだ詠み人知らずの短歌(東歌・女歌)です。
金門田を荒垣ま斎み日が照れば雨を待とのす君をと待とも(14-3561)
<かなとだをあらがきまゆみ ひがとればあめをまとのす きみをとまとも>
<<我が家の門近くの田に荒垣で身を清めて日照りに対して雨を強く待ちたくなるように,あなた様が来られるのを心待ちにしております>>
家の近くにある門田には,自分の家の田であることを示すためや動物に荒らされないようにするため,荒垣(生垣)を植えていたのでしょう。
しかし,日照りが続くと生垣が枯れてしまう恐れがあり,身を清めて雨乞いの祈りをする気持ちが強くなります。このまま,あなた様が来てくださらないと,私の身体は干ばつの生垣のように,枯れてしまうようだと作者は訴えたいのでしょうね。
最後は,自身の孤独感を詠んだことでよく知られている大伴家持の短歌です。
うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しも独し思へば(19-4292)
<うらうらにてれるはるひに ひばりあがりこころかなしも ひとりしおもへば>
<<うららかな春の日に雲雀が上空を飛んでいる。でも,(のどかな気持ちになれずに)うら悲しい。今自分一人であることを思うと>>
家持の孤独感の原因が何か,いろいろな説があるようですが,私は越中赴任から帰任して,中央政府の中の力関係に順応することへの難しさからくるものも一つにはあったような気がします。
<私の経験に当てはめる>
私が勤めていた会社で,新入社員から15年以上,三多摩方面の事業所で働いていた後,そこでの成果を認められ,新宿区の本社技術スタッフとして配属されたことがありました。しかし,私はその後何年も本社勤めの役員や管理職とのコミュニケーションがうまく行かずに悩んだ時期が続きました。
事業所で「成果を出したやつのお手並み拝見」といった非協力的な周囲に対して,どう協力を取りつけるかに,回答が出せないとき,この家持の孤独感に共感する気持ちが表れてきました。
その後,その時悩んだ経験がさまざまな場面で協力を取り付けるスキルの向上に役立ったのは事実かもしれません。
動きの詞(ことば)シリーズ…照る(3)に続く。
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