2010年11月8日月曜日

動きの詞(ことば)シリーズ…立つ(1)

今回は,現在でも私たちが普通に使っているた「立つ」について,万葉集ではどのような意味で使われているかを何回かに分けて書きます。
「立つ」について広辞苑や岩波古語辞典を開いてみると,意味の説明に非常に多くの行が使われています。
その長い意味の説明中に万葉集の引用が10以上も出てきます。
すでに万葉時代「立つ」には10以上の意味や用例が存在し,歴史が古く,奥深い意味の言葉であることが分かります。

「立つ」の意味を一言でいうとと「強く現れる」といっていいのかも知れません。
この場合は,「立つ」(現れる)対象が「立つ」の前や後に出てきます。
たとえば,万葉集の巻3に船出するから高い波よ立つなと九州熊本の地で読んだ長田王の短歌に対し,次のような大宰府次官の返歌があります。

沖つ波辺波立つとも我が背子が御船の泊り波立ためやも (3-247)
おきつなみへなみたつともわがせこがみふねのとまりなみたためやも
<<沖や岸辺の波が立っても(高く現れても)、あなた様(長田王)の御船が泊っている港は、波が立つ(高く現れる)ことなどきっとないですよ>>

この短歌では「立つ」の対象である「波」が二つ出てきます。この「波立つ」は現代でも使いますが,当時は本当に壁のように立っているような大きな波を表してしたようです。
その他,「立つ」の対象として,次のようなものが万葉集には出てきます。
動植物‥かまめ(カモメ),真木,鳥,麻,鹿,駒
自然現象‥霞,雲,霧,潮気,雨霧,春霧,日,虹,月
季節・時刻‥春,秋,年の端,朝
人・その他‥民,我,娘子,名,盾

これらは,「○○立つ」とか「立つ○○は」といった表現が万葉集に出てきます。これらの対象が高くハッキリと現れる(来る)意味を表す動詞として,「立つ」は当時として便利な言葉だったのだろうと私は推測します。
<中国瀋陽再出張記>
さて,11月2日~6日,私は今年の5月に続き中国東北地方瀋陽に再度出張してきました。
出張先の会社の技術者たちは,私が短い期間に再び来てくれたと大変歓んでくれ,IT業務の連携で以前にも増して中身の濃いコミュニケーションができました。
また,彼らは中国の物価上昇が進んでいることを少し気にしていましたが,みんな以前にも増して本当に明るく元気でした。
瀋陽の街も,たった半年足らずの内に,前回訪問時建設中だった高層マンションやビルが完成し,またあちこちでビルやマンションの建設が新たに始まっていました。
テレビCMや街角の広告看板などでは高級自動車や不動産の宣伝が溢れていました。
世界の多くの国が,今回の不況からの脱出に難渋している中,遼寧省の首都瀋陽の街を半年ぶりに見ただけですが,今の中国の高成長が際立っていることを改めて認識する結果となりました。

中国語で『ビル』は「大厦」,『マンション』は「公寓」と書きますが,まさに「大厦立つ」「公寓立つ」という表現がピッタリなのかも知れません(写真は瀋陽のホテルから撮ったもの。霞んでいるのは朝霧でスモッグではありません)。
立つ(2)に続く。

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