御酒,神酒(みき)…酒の尊敬語。神に捧げる酒。
砌(みぎり)…軒下・階下などの敷石の所。
胘(みげ)…牛,鹿,羊などの胃袋。塩辛の材料にした。
神輿,御輿(みこし)…神が乗る輿。
鶚、雎鳩(みさご)…おもに海上を飛ぶ大型の鳥。
京職(みさとづかさ)…律令制で京の行政・訴訟・租税・交通などの事務をつかさどった役所。
禊(みそぎ)…身を洗い清めること。
幣を(みてぐらを)…奈良にかかる枕詞。
御執(みとらし)…手にお取りになるもの。弓の尊敬語。
蜷(みな)…巻貝の総称、にな。
六月(みなづき)…水無月。
御法(みのり)…法、法令の尊敬語。
御佩刀を(みはかしを)…剣にかかる枕詞。
水縹(みはなだ)…藍の薄い色。みずいろ。
風流士(みやびを)…みやびやかな男。
海松(みる)…海産の緑藻。
水脈(みを)…船の通行に適する底深い水路。
今回は,京職(みさとづかさ)が出てくる滑稽な詠み人知らずの短歌を紹介します。
この頃の我が恋力賜らずは京職に出でて訴へむ(16-3859)
<このころのあがこひぢから たばらずは みさとづかさにいでてうれへむ>
<<最近の私の恋に対する努力と苦労を認めてもられないなら,奈良の京のお役所に訴えてもよいほどだよ>>
この短歌の前には,同じ作者が同様のことを詠ったと思われる次の短歌があります。
この頃の我が恋力記し集め功に申さば五位の冠(16-3858)
<このころのあがこひぢから しるしあつめ くうにまをさばごゐのかがふり>
<<近の私の恋に対する努力と苦労を記録してその功績を申請すれば五位の称号に値するほどだよ>>
この短歌2首は,どんなに努力しても大好きな相手(女性)に思いが伝わらなくて大変苦労し続けている本人(男性)自身の立場で詠んだ短歌ではないかと私は想像します。
しかし,当事者本人は実はこんな短歌を詠んでいる余裕すらなく,憔悴しきっている可能性が高い。
周りにいる人が見るに見かねて,またはその滑稽さを茶化して当事者本人に成代わって詠んだと考える方が面白いし,現実味がありそうです。
<現代の孤独な人々に必要なもの>
さて,今の時代でも一生懸命努力しても報われず,本人はその地獄(苦しみ)から這いあがれない状況のヒトがいるでしょう。
こういうときに本人の努力や苦労を分かりやすい譬えで説明してくれる友達,サークル仲間,職場の同僚や上司,近所のおばさんなどが居てくれることがどれだけ有り難いか知れません。
残念ながら,今はあまり干渉されたくないと思う若者は(もしかしたら中年以上の男性も?),距離の近い人間関係に重きを置かない人が多いのではないでしょうか。
人は物事がすべて順調で,好きな趣味や恋愛に没頭できるとき,それとあまり関係のない人々と付き合うことに興味が湧かないことはよくあることだと思います。
しかし,急に順調でなくなったとき,努力が報われないとき,何をすればよいか分からなくなったとき,落ち込んでしまったとき,やる気が急に衰えたとき,人生が嫌になったとき,死にたいと思ったとき,いろいろな人との繋がりによるアドバイス,手助けが大きな価値をもつことが多いに違いないと経験から思います。
<気づかせてくれる人の存在が重要>
今の世の中には,公共機関の相談窓口やプロの相談者(カウンセラー,医師,看護師,弁護士など)のサービスが昔に比べて整備されているように見えます。
しかし,本人が自分の状況が相談すべき状態だと感じなければ,基本的にそういった専門の相談相手は何もしてくれません。
日頃から,自分が気がつかない段階で自分の状況について積極的にいろんなことを教えてくれる多くの人(それも異なる視点で見る人,異なる価値観を持つ人,異なる経験をした人,異なる年齢や環境の人など)とフランクに話(言うだけでなく,素直に聞くこと)ができる機会をたくさんもっておくことが,今の不透明な時代,情報過多だが非常に偏って流される時代では,必要性が高くなっているのはないかと私は思うのです。
(「む」で始まる難読漢字に続く)
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