引き続き,「け」で始まる難読漢字を万葉集に出てくることばで拾ってみました(地名は除きます)
蓋し(けだし)…まさしく。ほんとうに。もしや。ひょっとしたら。
梳る(けづる)…くしけずる。
日並ぶ(けならぶ)…日数を重ねる。
異に(けに)…他よりすぐれて、ひどく。
鳧(けり)…チドリ科の渡り鳥。鳴き声が「けりり」と聞こえることが名前の由来らしい。
次は,梳る(けづる)が出てくる詠み人知らずの短歌です。
朝寝髪我れは梳らじ うるはしき君が手枕 触れてしものを(11-2578)
<あさねがみわれはけづらじ うるはしききみがたまくら ふれてしものを>
<<朝,寝起きの乱れた髪を私は梳らないでおきます。だって,大好きなあなたの手枕に触れた髪ですから>>
この和歌,作者が男性か女性か分かりません。
次の和歌のように当時「手枕を交わす」という言葉があり,手枕は常に男性がするものとは限らないと言えるからです。
遠妻と 手枕交へて寝たる夜は 鶏がねな鳴き 明けば明けぬとも(10-2021)
<とおつまと たまくらかへてねたるよは とりがねななきあけばあけぬと>
<<今度いつ逢えるか分からない貴女と手枕を互いにしつつ共寝をした夜は鶏よ鳴いてくれないで,夜が明けても>>
ただ,「梳らじ」の和歌は,髪に対する思い入れの強さが古今変わらないとするとやはり女性の和歌だと私は思いたいのです。
さて,江戸時代人気の高い花魁(おいらん)たちは,この和歌を達筆の書にして店の者を通じ,一夜を過ごした上客に渡したのかもしれません。
渡された客は「また来て指名したい」と思ったに違いありません。ちなみに,私の場合は意思が強いですから,この程度では動かされませんがね。
天の川「たびとはん。あんたの甲斐性やったら客にもなれまへんで~。」
また出てきたな「天の川」め。少しは言い方を気をつけろ! (「こ」で始まる難読漢字に続く)
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